がま口専門店 のんぱち屋 Blog
2026/10/07 21:04
日本製の覚悟店に参加してから、「日本製」という言葉を使う機会が増えました。
もともと私は、その言葉を何度も前に出すことに、少しためらいがありました。
商品説明など必要な場面では使っていたけれど、まず見てほしいのは、自分がつくったがま口そのもの。
その形や使い心地を気に入って、選んでいただきたいと思っていたからです。
今も、その気持ちは変わりません。
一方で、日本でものをつくる仕事を、これからも続けていきたい。
そのために自分ができることを考えるようになり、「日本製の覚悟店」に参加する意味も、少しずつ自分の中で深まっています。
私は、型紙づくりから裁断、縫製、仕上げまで、一人でがま口をつくっています。
撮影や発信、販売、発送、経理も自分の仕事です。
使う素材には、久留米絣もあれば、インド刺繍リボンや海外の生地もあります。
自分の目で選び、組み合わせ、使える形に仕立てる。その一つひとつに、自分の判断と責任があります。
がま口をつくり始めたころ、型紙付きの口金でつくったものが、思うように使えませんでした。
「これじゃ、何も入らないじゃん!」
そこから、自分で型紙を考えるようになりました。
見た目が整っていても、使いにくければ気になる。
あと少し形を変えたら、もっと取り出しやすくなるかもしれない。
つくって使い、直してまたつくる。その繰り返しを、2017年から続けています。

「ほどよいお財布」も、自分の暮らしの中から生まれました。
財布を小さくして、鞄を軽くしたい。でも、お札は折りたくない。
小銭もカードも、出し入れしやすい方がいい。その欲張りを、試作を重ねながら形にしました。
つくる側には、小さな工夫の積み重ねが見えています。
けれど、使う方にとって大事なのは、実際に使ったときにどうなのかということ。
私が時間をかけたことと、お客様が便利だと感じることは、同じではありません。
自分のこだわりが、使う方の日常にどう役立つのか。そこまで考えたいと思っています。
初めて日本製の覚悟店への参加を考えたときは、企業の皆さんに混ざって一人のがま口作家が出てもいいのだろうか、という気持ちもありました。それでも、参加したかった。
日本でものをつくり、それを仕事として続けようとしている。その点では、私も同じです。知ってもらいたいものがあるのなら、まず自分から手を挙げようと思いました。
そして、今年7月の会場で、たくさんの方にがま口を手に取っていただきました。
ほどよいお財布に、お客様ご自身でお札を差し込んでもらう。
お札が入った瞬間の驚きと笑顔を見る時間が、私はとても好きです。
説明だけでは伝わりきらなかった使い心地が、その場で伝わる。
使う方の反応から、私が気づくこともある。
イベントは、自分がつくったものを、お客様の日常と照らし合わせてもらえる場所なのです。
買っていただけたら、もちろん嬉しいです。
次の制作につながりますし、仕事として続けていくために欠かせないことです。
応援する気持ちで選んでくださる方にも、心から感謝しています。
作品を好きになってくださることも、この人の仕事が続いてほしいと思ってくださることも、どちらも嬉しい。その気持ちを受け取る私が、商品に何を込め、どう届けるかを考え続けたいのです。

大阪でご一緒する、もちはだ/ワシオ株式会社の鷲尾岳さんが書かれたnoteを読み、
強くうなずいた部分がありました。
なくなりそうだから買ってほしい、という事情を、自分たちの商品価値にしてはいけない。
ものづくりの仕事には、苦しい現実があります。
それを伝えることは必要だと思いますし、個々のつくり手の努力だけで解決できない問題もあるでしょう。
ただ、自分の仕事を続けたいという願いは、私自身の願いです。
使う方には、ご自分の暮らしや好みに合うものを、ご自身で選んでいただきたい。
そのための理由を、商品の中につくり、きちんと伝えることが私の仕事だと思っています。
危機を知ったことが、ものづくりに関心を持つきっかけになることもあると思います。
そこから実物に触れ、「これ、いいな」と感じてもらえるところまで届いてほしい。
使い続ける理由になるのは、その方にとっての使い心地や、持つ喜びだからです。
そして、私が考えたい未来には、これからつくる側に立つ人たちもいます。

ものづくりに興味を持ち、技術を身につけ、仕事としてやってみたいと思う若い人たち。
その人たちに、今の私たちはどんな姿を見せられるだろうか。
苦しさばかりが伝われば、やってみたいと思う気持ちを遠ざけてしまうかもしれません。
反対に、つくる楽しさだけを伝えても、仕事としての現実は見えません。
工夫が形になる面白さ。技術を身につける難しさと喜び。
自分のつくったものが、誰かの暮らしに役立つ実感。
そして、
その仕事に見合う対価を得て、生活を成り立たせていくこと。
そういう姿を、私自身もつくっていきたいと思っています。
ハンドメイドにも、技術を磨き、考え、つくり、販売して、仕事として続けている人がたくさんいます。
私もその一人です。
「つくることが好き」を仕事にしていくために、制作も、伝え方も、販売も、考えることは尽きません。
私には、いつか工房を併設した実店舗を持ちたいという夢があります。
がま口を気軽に見に来てもらえる場所。そして、自分が積み重ねてきた技術を、一緒につくる仲間へつないでいける場所です。
その未来のためにも、まず今の自分が、つくる仕事を成り立たせていかなければと思っています。
日本製の覚悟店で出会った皆さんは、扱うものも、仕事の規模も違います。
自分だけでは知ることのできなかった仕事や考え方に触れ、
私も、自分の覚悟を改めて考えるようになりました。
私にとっての覚悟は、手を抜かず、自分が本当に便利だと思えるものを、自信を持って届けること。
そして、知ってもらい、選んでいただくために、自分から動くことです。
大阪でも、まずはがま口を手に取ってみてください。
お札を入れたり、口金を開け閉めしたりしながら、ご自身が使うところを想像していただけたら嬉しいです。
「うちのがま口、なかなかやるんですよ」 ドヤ
そう言って、自慢しに行きます。
つくる私も、選ぶ皆さんも、これからつくってみたい人も。
ものづくりの面白さに触れながら、その先の話ができる場所であってほしい。
私は、そんな思いで日本製の覚悟店に参加しています。
