がま口専門店 のんぱち屋 Blog

2026/10/10 22:43


~ネクタイ生地から生まれた、2つのがま口〜

「ばんそうこうが入るくらいのポーチが欲しいんですよね」

そんな何気ない会話から、今回のがま口制作が始まりました。

ご依頼くださったのは、ばんそうこうの「ニッコーバン」でおなじみ、日廣薬品株式会社さん。

ニッコーバンさんとは日本製の覚悟店で知り合い、

東京で開催された第一回では、お隣同士で出店していました。

SNS中の人さんは、5月のデザインフェスタにも、のんぱち屋のブースを見に来てくださった方。

ブースの作り方なども熱心に見てくださり、とても情熱を持って取り組まれている方です。

そんな中の人さんから、ある日ご相談をいただきました。

「ネクタイと同じ生地で作ったチーフがあるんですが、それでがま口って作れますか?」

ネクタイの生地で、がま口。

ほほぉ……。

普段あまり扱わない素材ではありますが、なんだか面白そうじゃないですか。

「じゃあ、ちょっとチャレンジしてみましょうか!」

こうして、今回の制作が始まりました。



■ ばんそうこう柄のネクタイには、物語がある。

今回お預かりしたのは、笏本縫製さんがデザインされた2種類の生地。

実はこれ、ニッコーバンさんのオリジナルネクタイとお揃いのポケットチーフなんです。

しかも、このネクタイには初代と2代目があり、それぞれに誕生の経緯があるそうです。

初代のネクタイを作る際、ニッコーバンの金尾さんから笏本縫製さんへ伝えられたリクエストは2つ。

ひとつは、ニッコーバンのイメージカラーである赤地にすること。

もうひとつは、ニッコーバンの各種サイズを散りばめること。

そうして完成した初代ネクタイは、よく見るとばんそうこうが居るさりげないデザイン。

しかも、Mサイズ、指先サイズ、ジャンボサイズと

3種類のばんそうこうが散りばめられています。


そして2代目。

今度は、ひと目でばんそうこう屋さんだとわかるようにと、笏本縫製さんから柄を大きくする提案があったそうです。

デザインをお任せして完成した2代目は、大きなばんそうこうが大胆に配置されたもの。

こちらは現在、看板ネクタイとして大活躍しているとのこと。


同じ赤い生地でも、まったく違う表情を持つ2種類。

どちらも、ニッコーバンさんと笏本縫製さんの想いが詰まった生地です。


さて。

この生地を、がま口に仕立てます。



■ 生地を持った瞬間、嫌な予感がした。

お預かりしたのは、正方形のポケットチーフ。

まずは生地の状態を確認しようと、手に取った瞬間。

「……これはまずいぞ。」

普段扱っている綿生地とは、明らかに勝手が違う。

なんとなく、手強そうな予感。

そして、いざ裁断してみると。

ホロホロホロホロ……。

切ったそばから、生地の端が解れていくではありませんか!

あぁぁぁ!!やっぱりそうきたか!

生地を切るということは、当然ながら切り口ができるわけですが、その切り口からどんどん糸が解れていく。

接着芯を貼る作業も、いつも通りにはいきません。

生地の上からアイロンを当てても大丈夫なのか。

熱や圧力で傷めてしまわないか。

当て布をしたり、芯側からアイロンを当てたり。

ひとつひとつ確認しながら、慎重に作業を進めました。

普段なら迷わず進める工程も、今回はそうはいかない。

裁断しては芯を貼り、次の工程へ。

とにかく生地が解れてしまわないよう、神経を使いながらの制作です。

実は以前、金襴生地でがま口バッグを作ったことがありまして。

その時も、なかなかの苦戦を強いられました。

「もう二度と手を付けない!」

そう思ったはずなのに。

またしても、手強い生地と格闘することになろうとは。笑

でもね。

これがまた、楽しいんですよ。

「あー!こんなんなっちゃったよ!」

「くっそー!どうするかなぁ!」

なんて独り言を言いながら、次の手を考える。

どうすれば綺麗に仕上がるのか。

どうすれば、この生地を活かせるのか。

頭の中は、そんなことでいっぱい。

気付けば、ニヤニヤしながら作っていました。



■ まずは、ばんそうこうが入るポーチ。

今回、最初にご相談いただいたのは、ばんそうこうが入るくらいのポーチでした。

大阪で開催される「日本製の覚悟店」で、店頭に置いたり身に着けたい。

そんなお話から始まったご依頼です。

そこで、2代目の大きなばんそうこう柄をボディと底板に使用。

内ポケットには、初代の小さなばんそうこう柄を使いました。

外側は、ひと目でばんそうこう屋さんだとわかる大胆な柄。

そして、開けると小さなばんそうこう柄が登場します。

同じ会社の生地なのに、組み合わせることで違った表情が生まれる。

これは、なかなか面白い。

底板の絆創膏サイズが丁度よかった♡ 底板外れます。



■ もうひとつ、作らせてもらってもいいですか?

さて、ポーチを制作しながら、生地を眺めていた時のこと。

どうやら、工夫すればもうひとつ作れそう。

そこで、ちょっと想像してみたのです。

12月の日本製の覚悟店 in 大阪。

ニッコーバンさんのブースで、ばんそうこう柄のがま口バッグを身につけて接客する中の人さん。

お客様から声をかけられたら、がま口を開ける。

中からニッコーバンの試供品を取り出して、

「こちら、どうぞ!」


……なんか、いいじゃないですか!


ばんそうこう屋さんが、ばんそうこう柄のバッグから、ばんそうこうを取り出す。

そんな光景 最高かよ!とコーフン気味!

前回の覚悟店で、実際に配られていた試供品の大きさも見ていました。

あのサイズなら、コンパクトながま口でも結構入るはず。

そう思ったら、どうしても作ってみたくなりまして。

「残った生地の行き先が無ければ、もうひとつ作らせてもらってもいいですか?」

と、こちらからお願いしました。

こうして、当初の予定にはなかった、がま口バッグも制作することになったのです。



■ 生地を、どこまで使い切れるか。

とはいえ、使える生地は限られています。

正方形のポケットチーフですから、決して大きな生地ではありません。

残った生地を広げて、どのくらいの大きさまで作れるかを考える。

口金は15cm。

高さは約14cm。

小ぶりではありますが、バッグと同じ作り方で、底板も付けることにしました。

ボディには初代の小さなばんそうこう柄。

外ポケットと内ポケットには、2代目の大きなばんそうこう柄を使用。

そして、持ち手部分にも、使えるだけ生地を使う。

足りない部分は帆布など別の生地で補いながら、できる限りオリジナル生地を活かしました。


ここにも使える。

あ、こっちにも使えるぞ。

そんなことを繰り返しながら、ギリギリまで裁断。

最終的に残った生地は、約10cm×5cmほどの小さな長方形。

ほぼ使い切ったぞーーー!!

と、なかなかの達成感でございます。


■ このタグは、絶対に表に付けたい!

今回、もうひとつこだわったものがあります。

それが、オリジナルの布タグ。

「日廣薬品株式会社」

社名が入った、完全オリジナルのタグです。

これを見た瞬間、

「あ!これは絶対に表に付けたい!」

と、ビビッときました。

普段なら内側に付けることもある布タグですが、今回は違う。

せっかくのオリジナル生地。

ばんそうこう柄だけでなく、どこの会社のがま口なのかも、しっかり伝わるようにしたい。

そして、何よりこのタグが格好いい。

社名入りのタグが加わることで、全体がぐっと引き締まりました。

これはもう、立派な看板がま口ではないでしょうか。


■ 完成!そして、ご依頼主のもとへ。

こうして、2つのがま口が完成しました。

制作中は生地との格闘でしたが、完成して並べてみると、なかなかの存在感。

手元にあったニッコーバンの絆創膏の箱と一緒に写真を撮ってみました。

うん。

これはいい!

完成したがま口は、中の人さんのもとへお送りしました。

写真をご覧になって、

「めちゃくちゃ可愛い♡」

と喜んでいただき、完成品にも「お願いして良かったです!」というお声をいただきました。

作り手として、嬉しい瞬間です。

もちろん、喜んでいただけたことも嬉しいのですが。

私自身、今回の制作が本当に楽しかった。

生地をどう扱うか悩んだ時間も。

裁断したそばから解れていく生地に、悪戦苦闘した時間も。

限られた生地をどう使い切るか考えた時間も。

少しずつ形になっていくのを眺める時間も。

そして、完成した瞬間も。

何もかもが、楽しかったのです。



■ ものづくりが、ものづくりにつながる。

ばんそうこうを作る、ニッコーバンさん。

そのばんそうこうをモチーフに、ネクタイを作る笏本縫製さん。

そして、その生地を使ってがま口を作る私。

作っているものも、使う技術も、まったく違います。

でも、こうしてひとつのものづくりが、次のものづくりへとつながっていく。

今回のご依頼は、そんな面白さを感じられるお仕事でした。

日本製の覚悟店でお隣同士になったこと。

デザインフェスタに足を運んでくださったこと。

そして、今回こうして一緒にものづくりができたこと。

ひとつひとつのご縁がつながって、新しいものが生まれました。

ものづくりを仕事にしていると、決して楽しいことばかりではありません。

思うようにいかないこともあるし、苦労することも山ほどあります。

それでも、やっぱり作ることが好きなんですよね。

今回も、手強い生地を前にしながら、ずっとニヤニヤしていました。

難しいからこそ考える。

考えて、試して、形にする。

そして、完成したものを見て喜んでいただける。

あぁ、ものづくりって面白い。

改めて、そう感じたお仕事でした。

12月11日・12日に開催される「日本製の覚悟店 in 大阪」。

今回制作した2つのがま口も、ニッコーバンさんのブースでご覧いただけるかもしれません。

もし会場で見かけたら、ぜひ注目してみてください。

そして、ばんそうこう柄のがま口バッグから試供品を取り出していたら。

きっと私は、どこかでニヤニヤしていると思います。笑

ニッコーバンさん!このたびは素敵なご依頼をありがとうございました!


これからも、ものづくりのご縁が広がっていきますように。