がま口専門店 のんぱち屋 Blog

2026/10/14 12:00


がま口バッグの底角に使っている、黒に近いダークブラウンの素材。
実はこれ、バッグだけでなく、看板商品の「ほどよいお財布」や「おにぎりがまぐち」にも使っている、のんち屋にとって欠かせない素材なんです。

今回は、そんな人工皮革について、出会いから現在までのお話をしてみようと思います。


そもそも人工皮革って?


人工皮革は、繊維を組み合わせた基材に樹脂を使用し、天然皮革のような風合いや質感を持たせた素材です。
よく似た言葉に「合成皮革」がありますが、一般的にはその構造に違いがあります。合成皮革は織物や編物などを基材とするのに対し、人工皮革は主に不織布を基材としています。
ただし、人工皮革だから必ず丈夫、加水分解しない、というわけではありません。使用されている樹脂や製法、使用環境によって性質は異なります。

私が使っているのは、スエードに銀面加工を施した人工皮革。色は、限りなく黒に近いダークブラウンです。


始まりは、ふたつの条件から


この素材を探し始めたとき、私には譲れない条件がありました。
ひとつは、加水分解による劣化をできるだけ避けられること。
もうひとつは、切りっぱなしで使えること。
バッグの底角は、使っているうちに擦れたり、ものに触れたりする部分です。せっかく丁寧に作ったバッグだからこそ、素材選びにも気を配りたい。
そんな思いで、条件に合う素材を探していました。

そして、ようやくたどり着いたのが、現在使っている人工皮革です。

試しに購入して、実際に触ってみると……。
スエードの毛羽立ちを抑える銀面加工が施された表面。柔らかく、手触りが良く、それでいて適度な張りもある。しかも、見た目にも高級感がある。

「これだ!!」


という感じでした。

のんぱち屋のバッグは、ただ硬く、がっちりと作りたいわけではありません。しっかりしているけれど、硬すぎない。手に触れたときの肌当たりも良く、柔らかさを感じられるバッグにしたい。
そんなバッグに、この人工皮革の底角が加わる。
機能面を考えて探し始めた素材でしたが、仕上がりの雰囲気まで、私が作りたいバッグにぴったりだったんです。


作り手にとっても、ありがたい素材


実際に使い始めてからも、この素材に対する印象は変わりませんでした。厚すぎず、でも適度な張りがあって、しっかりしている。裁断もしやすく、ミシンでも縫いやすい。
長年使ってきましたが、素材そのものの扱いにくさで大きく苦労した記憶は、正直なところ、あまりありません。
もちろん、バッグの底角をきれいに縫い付ける工程には技術も時間も必要です。でも、それは素材が扱いにくいからではなく、私が仕上がりにこだわっているから。

底角の形や縫製については、別の記事で詳しくご紹介しています。

 ほどよいお財布の蛇腹にも

実は、この人工皮革が活躍しているのは、バッグの底角だけではありません。
のんぱち屋の看板商品「ほどよいお財布」。その内部にある蛇腹部分にも、この素材を使用しています。

お財布を考えていたとき、悩んでいたことのひとつが、蛇腹の厚みでした。生地を縫い合わせたり、端を折り込んだりして作ると、どうしても厚みが出てしまう。その厚みの分だけ、中に入れられるものが減ってしまうんです。収納するための仕切りなのに、その仕切りが収納スペースを取ってしまう。
それが、どうにも気になっていました。
「もっとすっきり作れないものか……」と考えていたとき、ふと思い出したんです。

「あれ? うちに、いい素材があるじゃないか!」

そう。バッグの底角に使っていた、あの人工皮革です。切りっぱなしで使えるので、余計な厚みを抑えられる。適度な張りもある。しかも、表面は黒に近いダークブラウン、裏面は落ち着いたグレーの単色。折り曲げたときに裏面が見えても、見た目に違和感がありません。
試してみたところ、

「こりゃいい!」

となりまして、それ以来、ほどよいお財布の蛇腹にも使い続けています。
お財布の収納力や使いやすさを考えた結果、バッグの底角用に選んだ素材が、ここでも役に立ってくれたわけです。

※蛇腹の具体的な構造や製法については、ここでは秘密にしておきます(笑)。

 おにぎりがまぐちの海苔にも


そして、もうひとつ。おにぎりがまぐちの「海苔」の部分にも、この人工皮革を使っています。あの黒に近い色合いと、スエード調の落ち着いた質感がおにぎりの海苔を表現するのにも、ちょうど良かったんです。

バッグの底角では、実用性と見た目。
ほどよいお財布では、厚みを抑えるための工夫。
おにぎりがまぐちでは、デザインの一部として。
同じ素材なのに、それぞれ違う役割を担ってくれています。


 そして、もう同じものが買えない

ここまで気に入って使い続けてきた素材なのですが、実はひとつ困ったことがあります。
いつも購入していたShopで、この人工皮革の取り扱いが終了してしまいました。
使い始めた頃は、手元の在庫が少なくなったら巻きで買い足す、という形で仕入れていました。
ところが、一昨年頃だったでしょうか。Shopを確認したところ、残っていたのは、あと2本ほど。

「これは、なくなったらまずいぞ……!」

そう思い、残っていた在庫をすべて購入しました。
その後も、また入荷していないかなと、ときどき確認していたのですが、とうとう商品ページ自体がなくなってしまいました。

現在、同じ素材を購入することはできません。
もちろん、世の中にはさまざまな人工皮革があります。
でも、色が似ているだけでも、手触りが似ているだけでも駄目なんです。
厚み、張り、柔らかさ、裁断や縫製のしやすさ、表と裏の色合い。
そして、私が作っているがま口に合うこと。

これらを満たす素材となると、簡単には見つからないだろうなと思っています。


 素材ひとつにも、理由がある

がま口を作るとき、私は「この素材だから使う」というよりも、「こういうものを作りたいから、この条件を満たす素材が欲しい」と考えることが多いです。

使いやすくしたい。

余計な厚みを出したくない。

手触りも大切にしたい。

見た目も、すっきり仕上げたい。

そうした小さな希望を積み重ねていく中で、この人工皮革は、いくつもの場面で力を貸してくれました。
だから、簡単に手放したくない素材なんです。
いつかは別の素材を探さなければならない日が来るかもしれません。
それでも、今ある素材を大切に使いながら、これからも自分が納得できるがま口を作っていきたいと思っています。

完成したがま口、なかなか見えない素材選びのお話。

こんなところにも、のんぱち屋のこだわりが詰まっているのでございます。